建物について[About architecture]
しらさぎ美術館_仮抜粋
●テキスト:押尾章治 UA ブログより転載
●写真撮影:鳥村鋼一
設計主旨
敷地と周辺状況
敷地は宇都宮市の郊外。南側で県道に面し、東西は畑に挟まれている。特に西側はその先に大きな水田帯と平地林が広がる風光明媚な場所である。しかしどういう経緯からか、敷地北側にある住宅街から南へ延びてきた道路が、この敷地の手前で行き止りとなっていた。そのため施主は長年の間、県道へ抜ける地域の人たちのために、敷地の東の端を通させていたのである。
個人宅の「離れ」を地域に開く
今回は、個人蔵の美術作品の鑑賞用に「離れ」を計画する上で、その宙ぶらりんになっていた地域の「道」を積極的に計画に取り入れてみた。加えて、母屋の南側の雑木林状になっていた場所も、地域の人々の憩いのために積極的に供することを意図した。それらは、大美術館にはない小作品や地域作家の作品展示を通じて地域貢献しようという、施主の意向をさらに広げるものでもあった。
トンネル型建築
この「離れ」は、地域に開かれた「道」の上に計画した。10坪程の展示室と書斎、収蔵庫を、直線と円環状の「道」が貫くかたちだ。
展示室と書斎の入口は、トンネル内の中央で向かい合う。そこを基点に、展示室側の外壁を「道」に沿ってカーブさせることで、敷地西側の円環状の「道」へとつながる。日常の通行や展示作品の鑑賞に続いて、隣接した小さな広場の散策や地域の周景も楽しめる計画なのだ。これは、少しずつずれながら広がる直線と円環の「道」の構成による、地域の公共性に対応する間口の大きさと、小さな一個人の趣味生活というスケールの違いを、整合させ繋げるデザインでもある。
シンプルな家型に、大きなアーチ開口。トンネルをくぐるという単機能のみを表現したミニマルな外観。トンネルをくぐることで、地域社会との触れあいが高まり、地域に根ざした生活の実感を更に深めるきっかけが生まれるのである。
用 途 : 個人住宅の「離れ」
構造規模 : 木造/地上1階
敷地面積 : 464.80�(140.60坪)
延床面積 : 73.00�(22.08坪)
住 所 : 宇都宮市下田原町1758-1
設計・監理: 押尾章治+UA東京、宇都宮事務所
施 工 : 成常建設